語頭P音の一考察 -オノマトペを中心に-
A study of P sound in Japanese Onomatopoeia
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口頭語の世界で独特の音象徴性を帯びて用いられたオノマトペの語頭P音は、キリシタン資料のローマ字によって花開いた。語頭P音の登場は、当時の社会変動に連動してハ行子音の歴史と体系を更新させたばかりではなく、語彙の増加に重要な役割を果たし、日本語の運用の効率を高めたと言える。 語頭P音の言葉は、中世末、『日葡辞書』のロ―マ字によって正式に文字化され、音象徴表現においてよく用いられるようになった。『日葡辞書』では、音声․意味的にも「ハ行:バ行」の対立が優勢であるが、伝統的な清․濁音の対立を保持してきた「パ行:バ行」とにその席を譲る兆しが見えはじめたと言える。 この「パ行:バ行」との対立現象は、近世末․近代初の『和英語林集成』では一段と著しくなった。ハ行音のパ行への変化と語頭P音の拡張は、近代でも、「フ」音を除く、ハ行音は、オノマトペにおいては濁音であるバ行に対する清音としての音象徴的効果を失い、その位置をパ行に譲ったものと解釈できる。 現代になると、バ行との清․濁音との対立関係にあるパ行の方が、「パリパリーバリバリ」のように音象徴表現においては独特の役目を持っているので音声的な対立と清濁音の対立から見る見地では、ハ行の役割をパ行が吸収․統合する可能性が高いと言える。 ここに見られるハ行とパ行との関係は、オノマトペが[p]、一般語が[ɸ]ということで相補分布に通じるものがあるが、いずれもそれに対をなす濁音として[b]を共有している事実を見逃してはいけない。 このように中世末、語頭P音が文字化されるにつれて始まったハ行のパ行への変遷についての考察は、単なる音声․意味的な考察だけでなく、一連の連動した変化、すなわち、ハ行子音の変遷や外來文化との接触と外來語の受容など、中世末から近代時代の社会的な変動も背景に入れて考察すべきものである。
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