植民地朝鮮における歴史編纂と近代学術知――『朝鮮半島史』を中心に――
History compilation and modern science during the Japanese occupation of Korea from 1910 to 1945
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『朝鮮史』とは朝鮮総督府朝鮮史編修会によって編纂された、古代から高宗に至る編年体の歴史書である。1922年設置された朝鮮史編纂委員会設置に端を発し、1925年に日朝の学者を組織しての朝鮮史編修会が組織されてから本格的に編纂作業が開始された。1932年に刊行が開始され、1938年に6編35巻、24000頁余が完結した。文字どおり、日本の朝鮮に対する植民地支配を象徴する事業であり、植民地支配の中での「他者表象」を如実に示す事業であったといってよい。そのため、戦後は韓国では植民地支配の負の遺産、収奪の代表的なものとされ、全面的に否定された歴史書であった。事実、そうした記述や史観が存在していることは明白である(停滞史観、朝貢国=従属国観、没主体性論=他律性論、日朝同祖論など)。また日本側でも研究されることは少なく、ようやくにして東大の史料編纂所が史料調査に乗り出した段階にある。だが一方で、『朝鮮史』編纂は、近代学術知=近代歴史学による記述=造作・塑型であったことも注目される必要がある(史料主義的方法、朝鮮を一個の文化共同体として捉える視点、自然人類学的な視点、王朝編年史的記述など)。そうであればこそ、『朝鮮史』編纂に関わった日本人研究者が戦後も「無反省」でいられ、何よりもこの編纂に関わった朝鮮人研究者が、解放後の歴史学のパイオニアとして、今度は「民族主体性」論の視点から歴史記述を行っていくことを可能にしたといえよう。したがって、『朝鮮史』編纂事業は、まさにヘゲモニー的な日本の植民地支配を象徴するものであったことは当然として、同時に近代学術自体が孕む植民地主義を示すものとして、戦後も継承され再生産され続けていることへの批判として、思想史的に検討されていかなければならない。 本稿では、こうした課題について検討する一端として、『朝鮮史』編纂に先だって編輯された『朝鮮半島史』稿本の紹介と分析を行い、最終的には近代学術知(近代歴史学)の「科学性」「実証性」に対する拝跪こそが、コロニアリズムの核心に存在していることを明らかにするものである。
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