種類を表す「名詞+で」句の成立条件
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日本語でいわゆる格助詞と呼ばれる「で」は、(1)のように、事物を表す名詞に付いて、材料や道具、手段、原因などを表すとされる。 (1) a. 紙で人形をこしらえる:材料 b. ナイフで切る:道具 c. 仕入れた魚をトラックで運ぶ:手段、方法 d. どの道路も車でぎっしりである:原因 一方、このような「で」句の中には、(1)とは意味機能を異にする(2)のようなものがあるが、(2)の各々の「で」句は道具や原因、手段を表さない点で(1)とは区別される。 (2) a. コーヒーはブラックで飲むのがコーヒー通の飲み方。 b. サーモンを刺身で食べるようになった。 c. へンリー・コットンの本も原書で読みました。 本稿では、これまであまり言及されることのなかった(2)のような「で」句について、①その意味的な性質と②成立条件を明らかにした。まず、意味的な性質として、(2)の「で」句は、目的語と関連した一定の種類を表す。(2a)は目的語「コーヒー」の入れ方に関する種類、(2b)は「サーモン」を主食材とした料理の種類、(2c)は「本」の出版形態と関連した種類を表す。次に、成立条件について、目的語の種類を表す「で」句は、その名詞が目的語にとって変化可能な性質と関わる種類を表す場合にのみ成立する。(2)の「で」句の名詞はいずれも目的語に一定の操作を加えることによって変化することができる種類を表す。なお、このような成立条件は、「で」句が成立しない(3)の例からも確認することができる。 (3) a.* コーヒーを{モカで/キリマンザロで}飲んだ 「原産地/原料の違いに関わる種類」 b.* パソコンを{シャープ/東芝で}買いました 「生産元の違いに関わる種類」 c.* お酒を{焼酎で/ウィスキーで}飲んだ 「原料の違いに関わる種類」 (3)の「で」句は目的語の原産地や材料、生産元の違いに関わる種類を表すが、このような種類はすでに存在する個体に一定の操作を加えても変化することのできない性質のものであり、そのため、「で」句は成立しない。
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