東アジア説話と西鶴小説 ⎯ 『新可笑記』及び『万の文反古』をめぐって ⎯
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초록
本稿では西鶴本とされる『新可笑記』(元禄元年<1688>刊、5巻5冊)および『万の文反古』(元禄9年<1696>刊、5巻5冊)に見える二つの話が中国、あるいは朝鮮にいち早く流布していた東アジア共通の説話であることに注目、これらの話がどのような出典をもとにして創作され、どのように変容されたかを検討してみた。まず、『新可笑記』の4「腹からの女追剥」が従来より指摘のあった『今昔物語集』あるいは『宝物集』ではなく、寛文年間に刊行された『法苑珠林』系統の説話を利用した可能性や、貞享年間に刊行されたであろう『合類大因縁集』巻7の説話2話も同時に用いた可能性を追究してみた。また、『万の文反古』5の2「二膳居ゑる旅の面影」が『合類大因縁集』巻7に見える二つの説話を取り合わせる形で創作された可能性についても合わせて検討を加えてみた。そしてその結果、『合類大因縁集』巻7所収の東アジア共通の説話4話が、それぞれ『新可笑記』5の4および』万の文反古』5の2と関連性を持つものである可能性が推察できた。次に、『新可笑記』5の4に見える「男追剥と結ばれた女(女追剥の姉妹の母)」の人物像が、『今昔物語集』巻29「不被知人女盗人語第3」に見える、「女盗賊と結ばれた男」の趣向を再用した可能性を追究してみた。また、『万の文反古』5の2および『好色一代女』(貞享3年<1686>刊、6巻6冊)1の1「老女隠家」など、西鶴小説によく見られる「老女の回想」の場面が、東アジアにおける伝播過程で日本にもたらされた中国説話の影響によるものである可能性を『破睡録』なる朝鮮漢文笑話集の所収話との比較を通して考察してみた。本稿で行ったこれらの検討の結果によって、西鶴小説は近世以前の説話はもちろんのこと、近世期に新たに日本に移入したであろう中国および朝鮮の説話とも関連性を持つことが新たに見えてきたのは注目すべき点と言えよう。近世以前からいちはやく日本に流布していた東アジアのこうした説話が、近世期に入ってはどのように変容しながら小説の材料として用いられてきたかを西鶴小説は如実に物語ってくれる。そして西鶴小説に見えるこうした話を通してわれわれは東アジアにおける説話共有の新たな一面を知ることができるのである。
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