副詞「よく」の程度表示の意味論的考察
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本稿は多義的な副詞「よく」の意味構造を明らかにする試みの一つとして、従来程度副詞としての用法と認められてきた「よく」の機能に<情態性>と<程度性>の機能が共存していたことに着目し、それらを具体的に区別する必要があることを指摘し、各用法の特徴を明らかにすることを目的とするものである。まず、「よく」が程度副詞として定着しているなら、典型的な程度副詞との入れ替えが自由なはずであるという推定から、「非常に」との入れ替えテストを行った。その結果、不可能の方が<情態性>、可能の方が<程度性>の用法であることが解明された。そのうち<情態性>の「よく」は、修飾を受ける動詞の形式や意味によって、《充実性》《確実性》《十分性》という3つの意義素に分岐したものであることが確認された。それらはさらに、<情態性>のみを有する純粋な情態副詞と称しうるものと、基本的には情態副詞であるが、述語の特徴によって<程度性>をも有するものとに分けられる。また<程度性>の「よく」は、アスペクトの観点から結果相と状態相に分けられ、結果相の述語は属性形容詞に似ており、<情態性>をも併せ持つものであり、状態相の述語は感情形容詞に似ており、<程度性>のみを表すものであることが明らかになった。なお<程度性>の「よく」は<評価性>が共に働くことにより、結果を取り立てる副詞になることが解明された。このような結果から程度表示の「よく」の中には、《充実性》《確実性》《十分性》からなる<情態性>と<程度性><評価性>が意味特徴として存在していることが確認できる。そのうち<情態性>の《確実性》と《十分性》は述語の特徴によって、<程度性>との関係を持ち、<程度性>の一部も《十分性》と関係を有する。また、《充実性》と<程度性>は<評価性>との関係により、結果を表す副詞となる。結局、各意義素は述語のありようによって特徴付けられ、それらの相互関係によって、ようやく程度表示の「よく」が形成されるのである。
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