金石範文学における「朝鮮的なもの」
The Korean in the Writings of Seok beom Kim
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초록
在日朝鮮人文学には「朝鮮的なもの」が多く表われている。金石範は、この「朝鮮的なもの」を作品に反映すべきだと主張していたにもかかわらず、多くの作家の作品と比べ、「朝鮮的なもの」の描き方に不自然さが感じられる。それは、他の作家の作品には、在日朝鮮人の有り様が私小説的な描写のなかで「朝鮮的なもの」が自然に表われるのに対し、私小説的な表現を回避した金石範の作品には、主人公とあまり関わりのない「朝鮮」が表われているからである。つまり、金石範の作品における「朝鮮的なもの」は説明する形で表現されているため、他の作家の作品より不自然に感じられるのである。彼が「朝鮮的なもの」を表現すべきだというのは、日本語で作品を書きながらも「作家としての主体」「朝鮮人としての主体」を失わないために必要な重要な表現手段である。彼が、このような意識を持つようになったのは、朝鮮を植民地化し、抑圧した戦前の日本で生まれ、また民族意識が高まった時期に、「組織」の仕事に携わろうと拘ったことなどが絡んでいたためであろう。金石範はこのような事情から日本語で作品を書くためには「朝鮮人」、そして「作家」の主体性の確立が必要だと考えられた。金石範は虚構․想像的な形式を通して「朝鮮的なもの」を表現し、その作品には、済州島を中心に朝鮮の風習や慣習などが分かりやすく記されているのが分る。「朝鮮的なもの」の表現として朝鮮の文化、祭祀やシャーマニズムが取り入れられている。祭祀は日本において「朝鮮」を味わうことのできる唯一の空間である。彼の作品には、祭祀の供え物や祭儀などについて細かく説明されている。男性主人公の女性への眼差しは、儒教的な考え方に立つ男性支配的イデオロギー、男性優位主義をベースとして表われるものだと言えよう。在日朝鮮人社会における朝鮮の文化を受け継いではいるのは「女性」と言えるが、とりわけ、金石範文学において「女性」の役割は大きく、「朝鮮」に繋げたいという気持ちが作品に色濃く描かれていることが分かる。
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