近世前期の世話淨瑠璃における自稱代名詞についての硏究-町人言葉を中心として-
A study of a self -styled pronoun in "sewazyoururi"
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本硏究では近世前期の作品である世話淨瑠璃を資料として、近世前期に使われた自称代名詞について考察を行った。 考察の結果、次のような結論が得られたのである。 近世前期にもっとも堅苦しく、高い敬意をあらわす自称代名詞はやはり「わたくし」であった。その「わたくし」と「われら」は共用されたりしながら、最上位待遇表現と人々に認識されていた。しかし、待遇価値の下限においては異なっており、「わたくし」が對等な關係で使用された用例はない反面、「われら」は對等な關係においても使用されていた。もちろん、下級階級の人々ではなく、富裕な町人や師匠などの知識人で代表される上級階級の人々が對等に「われら」を用いた。 一方、「わたし」と「わし」は主に女性によって用いられた共通点を持っていたが、それぞれの獨自的な用法を持っていた。つまり、主な使用主体・呼応する主な文末表現・待遇価値の上限・語感などの側面から察してみると、「わたし」と「わし」は異なっており、そのような相違点を備え、獨自的な領域で發達していた。 目下の相手に對する自称代名詞として「こち・こちと」と「おれ」の二つしかない。それも 「こち・こちと」はその使用主体が女性に傾いていたので、それを除くと男性は目下の相手に對して「おれ」だけをもって自分を表現したと言える。すなわち、目上の人に對して自分をどう称するかにおいてはいろいろ氣を配っていたが、目下の人に對して自分をどう称するかにおいては比較的單純であったことがわかる。 近世前期の自称代名詞には性別による使用の制限(「わたし」「わし」「こち・こちと」の主な使用主体は女性、「われら」の主な使用主体は男性)が多かったと言える。從って、近世前期上方ではどの自称代名詞を選擇して使用するかを決めることにおいて、性別がとても重要な基準として働いたことが窺われる。
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