異国·異界としての琉球 - 『椿説弓張月』の琉球表象 -
Ryukyu as a Foreign Country and Alien World
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초록
本論文では、異国·異界として表象された椿説弓張月の琉球について検証した。 琉球は日本から距離の離れた、独自の言語や制度を持つ異国であること、曚雲が王朝 を倒し、国の支配者を握る話には、怪物的表現が溢れていることなどを考察した。 椿説弓張月の筑紫下向物語群と伊豆八丈島配流物語群の異界表象を考察し、その 後、為朝が琉球に渡ったあとの琉球王朝興亡物語群を対象とするようになって、それま での異界表象とはまったく異なる完全な国家組織を有する異国表象が見られることを考 察してきた。琉球王朝興亡物語群における読本の物語世界の構成とそこに出現する悪 人像に言及して異国表象にどうして曚雲のごとき中世的邪悪霊の面影を秘めた悪人が 登場してくるのか、特に読本としての趣向性がその表象をどのように豊かにしているの かを検討した。 物語の構成からすると、筑紫下向物語群と八丈島配流物語群にはひとつの主題がつ らぬいていることが見てとれた。たとえば、筑紫下向物語群では筑紫の生国に下向する 為朝はその地への旅の途次、さまざまな地方の在地を通過するのだが、異界から出現 し、それぞれの土地を混乱に陥れていた怪物の妨害を退治․平定して行くことになる。 その物語群を規定する世界構成はまさに〈中心/周縁〉という構造的差別に拠ってい る。したがって為朝はいわば〈中心〉の都から下向してきた為政者像をもっていて、そ の力をもって〈周縁〉の地に棲息する邪悪霊を次々に打倒し、混乱と野蛮·暴力が支配 していた土地を解放し、〈中心〉の文明をもたらすことで正統な支配․統治を押し広げ ていったのである。 八丈島配流物語群でも、配流された為朝が海を渡って八丈島へと落着くのだが、そ の島の混沌を収めたあと、今度は積極的に八丈島の彼方にある未知の島々へと移動 し、それらの島々を征服して行くというものである。その為朝の行動もさまざまな異界 的な混沌と野蛮に覆われてきた大島、女護島、男の島に支配者為朝は牧畜と農業の技 術などを伝播してその地を文明化させている。文明化に当っては女護島、男の島に見ら れたような男女が一緒に住めないという迷信などを打破することも含まれる。こうしてまた異界的島々を支配․統治することで、それまで夷狄の領域とされてきた島々を平 定․支配することで、為朝が体現する〈中心〉へと領土支配を実現していくというもの である。 このように、二つの物語群において為朝は、京都から遣わされた国守、あるいはその 目代のごとく、島々の混沌·未開·野蛮を打倒し、〈中心〉の秩序․文化․技術をもた らすことで、支配․統治する為政者のようにふるまっている。この造型の一貫性が次の 琉球王朝興亡物語群へと引き継がれることになる。しかしそれまでの物語群では為朝の 平定は日本内部の地方であり、周辺の島々であったが、次の琉球は、虚構がないまぜに なってはいるものの、しかし現実の独自な存在である異国として表象するのではなく、 完全にこの世ではない異界と結びつけるという物語になっている。
Abstract
Bakin recycles the legend of Tametomo in his Chinsetsu-Yumiharizuki. Legend has it that Tametomo colonized Ryukyu in the 12th century, and his son, Shunten, became the founding father of the Ryukyu Royal family. At the time of Bakin, Ryukyu was an independent kingdom, paying tributes both to China and Satsuma of Japan. But just 30 years after Bakin’s death, Ryukyu was forced to become part of the Empire of Japan. Seen with this historical perspective, it would not be too extravagant to say that Bakin tried to justify the possible Japanese colonization of Ryukyu, basing his arguments on the legend of Tametomo. After all, Bakin seems to imply that Ryukyu had been a Japanese colony ever since the 12th century. In this sense, Bakin’s fiction shows an emergent form of Japanese colonial desire for Ryukyu. It must also be noted that there are some ambiguities about the representation of Ryukyu in Bakin’s work. Ryukyu is partly an imaginary land of the strange and the marvelous like the land of the long-legged tribe, and partly a real land to be occupied and colonized. Bakin’s Chinsetsu-Yumiharizuki seems to be divided within itself between the innocent wondering for the strange and the expansionist desire. The contradiction itself might be understood as a symptomatic case of Japanese desire and anxiety for the “Other.”
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